市役所職員と学歴

昔、公務員として市役所で仕事を始めて、学歴なんて意味が無いな、と思いました。

私の職場には、中卒の職員が居ました。バイトや嘱託職員ではなく、正規職員でした。

給料などの待遇は、初任給こそ違いますが、我々大卒と同じ給料表が適用されるので、大卒者と同じ年齢になる頃には追いつきます。そして、40歳や50歳になると出世する人と出世しない人で差がつきますが、学歴によるハンデは全くありません。

私の上司は高卒で、早稲田大学を出た私は何かと批判されていました。その人は

「社会に出たら学歴なんて関係ない。」

とよく言っていました。

これは、今日も日本全国で、学歴に自信の無い人が言っていると思いますが、2つの点から、滑稽だな、と思ってしまいます。

1つ目は、学歴と言うのは社会に出る瞬間に役に立つものだから、社会に出た後は役に立たなくても何もおかしくないということです。たまたま市役所という職場は高卒の採用も多い場所なので入る時も学歴があまり役に立ちませんでしたが、一般的に、大企業に入るなら大卒の方がチャンスが多いでしょう。

2つ目は、学歴なんて関係ないとわざわざ発言すること自体、仕事の能力と学歴を自分で結びつけていることです。市役所の仕事は、微分積分をするわけでも、英文読解をするわけでもありません。電話や窓口で市民にサービスしたり、偉い人の機嫌を取って紙にハンコを押して貰うのが仕事なわけです。そんな科目は大学入試にはありません。学歴と仕事内容は、結びつきません。上司の発言は、野球が上手い人に対して

「あの人は野球が上手い割に仕事ができない。社会に出たら野球の上手さなんて関係ない」

と言っているに等しいです。でも「あの人は野球が上手いくせに仕事ができない」とは誰も言わないけど、「あの人は勉強できるくせに仕事ができない」とはよく言われます。不思議ですね。私は野球の方が勉強よりもよっぽど仕事と似てるな、と思ったのですが。

その上司にはしばらく嫌われていましたが後に何故か和解しました。お世話になったので感謝しています。

さて、この話が公務員を辞めたこととどう繋がるかと言うと、

「せっかく東京にある大学に出してもらったのに公務員を辞めたら親に申し訳ない」

と思う気持ちが薄れたということがあります。せっかく大学を出たけど、中卒でも変わらない仕事をしていたので、大学に行っていたことが市役所に入るためのコストだったと思わずに済んだのです。親もそれを分かっていてか、私が市役所を辞めるときに

「せっかく大学まで出してやったのに市役所を辞めるのか」

とは言われませんでした。まあ、私の親がそんなことを言うような嫌な人じゃなかったというわけでもあるんですが。自分自身でも、大学を出て新卒で就職したのにそれを放棄することを勿体ないと思いませんでした。これは市役所という場で学歴が全く役に立たなかったからです。

ちなみに田舎の市役所では高卒や中卒は、入る時も、また入ってからもハンデになりません。性別でも学歴でも出世を差別をしない、リベラルな職場です。

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