市役所の仕事は定型の単純作業なのか

市役所に関するよくある誤解に

「市役所の仕事は提携業務ばかりで単純作業。ハンコを押したり数字をチェックするだけ。毎日変わらない日々がある。」

というものがあります。これは誤解で、ほぼ間違いなのですが、市役所の中に居る人に問題があるので、そう思われても仕方がないかなと思います。

私は市役所を辞めてからフリーランスの通訳案内士という仕事をしていますが、通訳案内士という仕事は最初こそかなり難しいものの、ほぼ同じ作業の繰り返しで、クリエイティブな思考は必要ありません。

対して公務員の時は、色々と企画したり交渉したりしてクリエイティブな仕事ばかりしていたなぁと思います。税金の取り立てをしていた時は、相手に払わせる話術も大事だったし、財産調査や差し押さえという伝家の宝刀も、いつどこで誰にどうやって発動するかということが難しいので、クリエイティブな企画力が必要でした。

その後に環境関係の仕事をしていた時は啓発イベントを企画する機会がかなりたくさんあり、メディアを使った広報やイベント現場での運営など、まさにクリエイティブな仕事がたくさんありました。また、環境関係の仕事は市ごとの条例でかなり大事なことまで決めることができるので、市民生活に関わる重要なルールを作るのが、市役所職員の仕事でした。

冒頭にある、市役所の職員は単純作業ばかりしているという誤解の原因は、市民課と言って住民票を発行している窓口の人が単純作業をしているからだと思います。あれは確かに単純作業ですが、主に嘱託職員がやっていました。正規職員もやることはありますが、それをしているのは、たくさん居る正規職員のうちの僅かな割合です。あと、会計課と言って、数字をチェックする仕事が多い部署も単純作業ですね。年収700万ぐらいの人が数字のチェックだけしていたりします。

なぜ市役所の仕事がクリエイティブでない単純作業だと誤解されてしまうかと言うと、職員の中にクリエイティブだと思って仕事をしていない人が多いからです。

例えば先述の環境の仕事ならば、本当に市民にとって便利なルールを作ったり、意味のあるイベントを企画することは、非常に裁量も大きくクリエイティブな仕事なのですが、まるでクリエイティブでないかのようにそれをやることもできるのです。良い例が、前例踏襲です。前例踏襲しておけば、何も考えずに仕事することができます。

別に前例踏襲をしなければならない決まりなど当然なく、市役所の職員はどんどん改善していく立場の人間です。でも、まるでそれに気づかないフリをして前例踏襲を続けることもできます。上司も前例踏襲が好きな人が多いですからね。

前例踏襲しておけば、失敗した時に取り敢えず自分が責められないというのも大きな要素です。前例踏襲せずに失敗すると、それを企画した人間のせいにされるので、リスクが大きいです。

これはシステムの欠陥なので、現在公務員をしている人は悪くないと思います。別に前例踏襲でも給料は毎年上がっていくので、チャレンジをすることによって得られる物の期待値が低すぎるのです。計算高い人が多いので、みんな、市を良くする余地があるのに挑戦しないことに対して、無意識に気づかないフリをして日々仕事をしています。

こうして、公務員は前例踏襲ばかりするようになり、単純作業と前例踏襲ばかりのクリエイティブさの欠片も無い公務員像ができあがったのでした。

公務員にうつ病になる人が多いのは何故か

公務員(市役所職員)は、民間企業に勤めている人から頻繁に「楽な仕事」と言われます。

公務員には、うつ病などのメンタルヘルスに疾患する人が多いと度々言われます。統計的に他の職業と比べてどうかは分かりませんが、私の体感では、確かにうつ病で長期休暇を取る人は多かった印象があります。

楽な仕事なのに、なぜ公務員はうつ病になりやすいのでしょうか?

私は理由は4つあると思っています。

  1. 真面目な人が多い
  2. 転職できないから人間関係が悪くなっても逃げられない
  3. 市民から悪意をぶつけられる
  4. 病気休暇制度が充実しているので休みやすい

1から順に説明します。まず、公務員には真面目な人が多いです。

世間でのイメージ通り、公務員の仕事には細かい決まりが色々とあります。私は真面目な人間ではないので、無視しても問題無さそうなルールは無視していました。でも、真面目な人ほど律儀にルールを守ろうとします。

すると労働時間も長くなります。で、真面目な人は勤務時間中に仕事が終わらないことを、自分のせいだと思う傾向があります。なので上司に内緒で残業をしたり土日に出勤したりして仕事を片付けていました。

これは精神的に非常に良くないですね。時間中に終わらないのは上司の責任が大きいので、

「仕事終わりません」

と上司に言うのが正解なのですが、真面目な人はそう言いたがりません。自分で自分を追い詰めていますね。そういう人はうつ病になりやすいです。

2について。公務員は民間企業に、ほぼ転職できません。

参考:公務員と転職

なので、職場の人間関係で悩んでも、毎年人事に提出する書類で

「○○さんと一緒に仕事できません。私を異動させてください」

と書くしかありません。これはこれでけっこう有効な手段なのですが、必ず異動させてくれるとは限りません。また、異動できるにしても4月までは我慢しなければなりませんので、それまでストレスを貯めることになります。

また、これは完全に私の主観なのですが、公務員は嫌な上司がたくさん居ます。今は公務員は人気の職業になったので、かなりまともな人が入庁していますが、その昔のバブル期などは、バブルのくせにどこの会社にも入れなかったような人が公務員になったわけです。別に、それでも誠意を持って働いているとこちらから感じられれば良いのですが、そうではない人が多いです。神経を疑うような酷い人というのが大抵の職場に居ます。

そういう人たちと働いていると、精神を病みます。そして、公務員は一度辞めたらもうその場には戻って来れませんし、民間企業には入れないので、公務員だった時のような良い暮らしはできません。奥さんが公務員の夫に期待することは、安定した仕事を持っていることですので、奥さんの手前、ふらっと仕事を辞めることもできません。逃げ場が無いというのは、病みやすいと思います。

3です。市民から悪意をぶつけられます。

私は税金の取り立てをしていたのですが、かなり市民の人から罵倒されました。バカとかアホとか普通に言われました。

税金を払っていない人が言っているので、相手が悪いのですが、私は彼らの言っていることも一理あると思ってしまったので、彼らの公務員批判を気にしていました。

「公務員は高い給料をもらっている割に働かない」

ともよく面と向かって言われましたが、私は本当にその通りだと思ったので、彼らの言葉を聞き流せませんでした。

転職して、今は、お客さんを楽しませる仕事をしていますので、お客さんからは感謝されることが多いです。もちろん失敗したら即、クレームに繋がる厳しさもありますが。基本的に罵倒されたりすることはありません。客から常に罵倒される仕事は、今思っても気分が悪かったなと思います。

近年の公務員バッシングは激しさを増しています。その矢面に立った時に聞き流せない人は、精神を病むでしょうね。

4は、病気休暇制度が充実していることです。これが一番大きな理由だと私は思います。

公務員の正規職員は、病気休暇という制度が充実しています。医者の診断書があれば、2年ぐらいは休める職場が多いです。しかもその休んでいる期間中も、給料が貰えます。働いている時の6割ぐらいはもらえます。期間が長引くともらえなくなるみたいですが。

この制度の最大の特徴は、メンタルヘルスを病んでいる時にも使えることです。このことは、世の中に、うつ病の診断書を簡単に書いていくれる精神科医が多いことと合わさって、誰でも簡単に病気休暇を発動できるようになります。

これは、転職できない公務員の、伝家の宝刀とでも言うべき制度です。仕事に行きたくなくなったらうつ病の診断書を取り、病気休暇を取得すれば、職場に対してメッセージが伝わりますね。

全てのうつ病で病気休暇を取る人がそうだと言う気は全くありませんが、この制度は、意図的に休むことができてしまいます。市役所に行きたくないなぁと思ったら精神科で診断書を書いてもらい、提出すれば長期休暇が取れます。給料も部分的にもらえるので生活には困りません。このカジュアルさが、公務員でうつ病で休む人が多い理由でしょうね。

 

以上、4つの理由で、公務員にうつ病で休む人が多いことを説明しました。

私は、一緒に働いている人に気を使っていたので、私が在職している間に同じ職場でうつ病で休む人は居ませんでした。こういうことは、誰も気づかないし、誰からも評価されませんが、私が市役所でしたことで最も貢献できたことは、仲間がうつ病にならないように気を使っていたことかなと思います。

市役所でスピーチの仕方を学んだ

私は通訳案内士という仕事をしています。これは言ってみれば外国人向けに英語でバスガイドをするような仕事です。

なので、バスの中でしゃべりっぱなしという状況がよくあります。大阪から金閣寺に移動する時に1時間以上しゃべってないといけない時とかあって、これはかなりキツイです。こんなに日本語で話すのも大変なのに英語ですからね。

そんな時、市役所の職員だった時に学んだことが役に立ちました。

公務員、特に市役所の職員は形式主義で事なかれ主義で市場経済の仕事がロクにこなせない税金泥棒というイメージで市民の人に見られることが多いので、公務員から民間企業に転職しようとしてもノースキルのオッサンという認定を受けるのですが、本当は公務員の仕事では多くの有意義なことが学べます。

参考記事:公務員と転職

ある日プレゼンテーション研修という研修を受ける機会がありました。そこで講師に言われたのが、

「話す時に、えーとか、あーとか言うのを完全に止めなさい」

ということ。

子供の頃、校長先生の退屈な話を聞いている時に、校長先生が「えー」って言う数を数えたという同級生が居ませんでしたか?私は同級生から、60回言っていたと聞いて、マジかよ校長先生そんなにたくさん「えー」って言ってるのか、と衝撃を受けました。

その研修のワークで人前でしゃべらされて、我々は凄い数の「えー」「あー」を言っていることに気づき、愕然としました。

その講師は、言いっぱなしではなく、具体的な方法を教えてくれました。

「えー、って言いそうになったら、黙ってください。それが間になります。隙間だらけで話すことになりますが、それで良いんです。」

それからというもの、私は市民と電話で話す時に、「えー」を言わないように特訓しました。当時、通訳案内士の資格の勉強をしていたので、通訳案内士として人前で話す時に上手く話せるようにとイメージして、話しました。

これを聞いてから、他の人が話す時も、注意深く聞くようになりました。すると、話すのが上手い人というのは「えー」とか「あー」を言わない人なんですね。「えー」「あー」は本当に話を聞き苦しくします。これを言わなければ、どんなくだらないこともTEDのスピーチのように意識高く聞こえるでしょう。

政治家は演説が仕事ですから、流石に話すのが上手い人が多いです。特に、小泉進次郎の演説は最高ですね。

進次郎の演説はめちゃくちゃ上手いし面白いんですが、その要素の一つに「えー」を全く言わないということがあります。内容はともかく、進次郎のように「えー」を言わず、間を取りながら話せばそれだけでスピーチのレベルが段違いに良くなるでしょう。参考に進次郎のスピーチを貼っておきます。

もう一人、良い例を紹介します。トランプ大統領です。こちらは英語なので、英語でスピーチをする私には、より参考になります。

トランプの英語は、一単語ずつ区切っていて、聞き取りやすいですね。また、大統領としての風格を感じさせます。

さて、二人の偉大な政治家の話し方ですが、「えー」や「あー」を言わず、間を取っていますね。タメが効いていて、言葉のパワーが増しています。

「えー」や「あー」を言わずに話そうとしてみると、そんなにスラスラと言葉が出てこないので、話が隙間だらけになります。沈黙が生まれるわけです。この沈黙が怖くて、普通の人は「えー」や「あー」を無意識に言ってしまうのです。

しかし思い切ってそれを言うのを我慢すると、それだけで、タメが効いた話し方になり、スピーチがグッと良くなります。まず大事なことは、勇気を持って、自分が話している時の沈黙を受け入れることです。

市役所での市民との電話応対の仕事でも、真剣にやれば市民にとっても、自分にとっても良いことがあります。チャイムが鳴ったら即帰るべきですが、チャイムが鳴るまでは真剣に仕事をするのが良いですね。

サービス残業に苦しむ公務員の人へ

公務員、特に市役所の職員というと真っ先に、残業が存在しない職業だと思われているようです。市民の人に

「あんたらは9時5時で良いよな」

と言われたことがあります。

実際には残業は普通にあって、夜の10時ぐらいまで仕事をしていたこともあります。

が、私はサービス残業は一切しませんでした。

私が居た市役所では残業というのは、上司が残業命令をした時にすべきものでした。どこの市役所もだいたいそうだと思います。

ただこれはルール上の話で、事後承認で残業している人も居るのではないかと思います。仕事が遅れたら残業し、残業した時間については後から上司に報告するというのは現実にはよくある話だと思います。

特に、市役所にはみんなで大きな一つのことをする部署と、一人ひとりが個人事業主のようにそれぞれ小さな別々の仕事をする部署があり、後者の場合に残業の事後報告ということが起こりやすいです。

私はサービス残業はしなかったのですが不思議なことに、市役所内には、サービス残業をしている人がたくさん居ました。おそらくは言いにくいのでしょう。時間がかかってしまったのは自分の責任だからとか勝手に考えて自分で残業をしてないことにしている人が多いと思います。

仮に残業したと言って、後から上司が、

「俺はそんな時間まで残業してたことなど知らないから残業代は出さない」

と言ってくるかもしれません。そしたら、

「じゃあ今日からもうあなたの見てないところで残業しません。ただ今日も時間内にやるべき仕事が終わりそうに無いですがどうしたら良いですか?」

と相談したら良いと思います。そこで始めて、上司は残業を事前に命令するという正しい手続きを取ることになるでしょう。

そして、命令をした以上、部下がむやみに長時間労働をしないように、上司は何か策を講じるべきです。その仕事は遅れても良いから残業してはいけないと自分の責任で部下に伝えたり、部下が残業している間は残って自分もその業務を一緒にやるなど。

この、残業の命令をするというルール通りのことがされないのは、部下の残業についてあまり関わりたくない上司が引き起こす現象のように見えました。

自分が命令したら自分もその残業に積極的に関わることになります。しかし何時までやったかについては事後承認でも良いと言っておけば自分は先に帰れます。だから、事後に時間を伝えても、上司は怒らずに申告された通りの残業代を払う手続きをしていたのだと思います。また、自分の口から仕事が遅れても良いから残業するなとは言いたくありません。自分のせいで業務が遅れることになりますから。だったら事後承認の残業の手続きをする方を選びます。自分の財布は痛みません。

上司というのは部下の仕事を管理する立場の人なので、本来であれば部下の仕事の進行を管理して事前に残業の命令をするべきです。ですが、そもそも部下の仕事をろくに把握もしていないという責任感の足りない管理職が市役所には多数居ました。年功序列のシステムの弊害です。

参考:公務員の終身雇用と年功序列の問題点

もし、これを読んでいる人でサービス残業をしている人が居たら、

「仕事が時間内に終わりませんけどどうしたら良いですか?」

とシンプルに上司に聞いてみることをオススメします。

公務員の終身雇用と年功序列の問題点

今日は、公務員の終身雇用と年功序列の問題点について書きたいと思います。

私が勤めていた市役所には、強固な終身雇用と年功序列のシステムがありました。

職員の身分は地方公務員法という法律で規定され、それを読むと、職員はよほどのことが無い限りクビにならないということが書いてあります。横領や収賄など悪意を持って悪いことをしたら当然クビですが、そういう明らかに悪いことをしなければほぼクビになりません。勤務上の成績不振も免職の理由ではありますが、仕事のできが悪いからクビになった人など聞いたことも無く、その制度自体が形骸化していることは明白でした。

加えて、給料は基本的に毎年、月給で5000円ぐらい上がっていきます。残業代とかボーナスも上がるので年収で考えれば5000円×12ヶ月=6万円より大きい上昇があります。特に仕事を頑張っても頑張らなくても上がります。

こういう環境で長年仕事をすると、人は仕事に対してネガティブな感情を抱くようになります。

新しい仕事は、単に自分の業務を増やすだけなので、積極的にしません。

業務を効率化してさっさと仕事を終わらせても、その分他の仕事が回ってくるだけなので、だったら効率化しなくて良いやという気持ちになります。むしろ、常に自分は精一杯やってますよというアピールをして、仕事をシャットアウトしようと思うようになります。忙しく見せかけている人で溢れていましたね。

その結果、人間的にも歪んでいき、人事部でさえ人を育てて未来の市役所を良くしようということを考えず、積極的に海外に研修に行こうとする若手職員の妨害を平気でしたりするようになります。

参考記事:公務員だった時にTOEICのおかげで海外に出張した話

そもそも、仕事を頑張ったことに対するご褒美が、出世しかありません。だいたい40歳ぐらいから出世に差が付き、確かに年収にも差が付きます。しかし最終的にも、めちゃくちゃ頑張った人と、管理職にならずに職務を終えた人の差も、それぞれ年収700万円と1000万円の差しかありません。

だったら最初から窓際職員になって定時まで仕事をしてチャイムと同時に退勤するのが最強じゃん、ということになります。実際、私から見て賢いなと思った人は、自分の意志で管理職にならないという選択をし、やりたいようにやっていました。

私も窓際職員になってベーシックインカムを確保し、余暇を楽しむ人生を送ろうかと思っていましたが、それも楽しくないと思ったので退職しました。今は通訳案内士と言っても底辺のフリーランスなのでお金は全然稼げていないですが、毎日楽しいです。

公務員だった時にTOEICのおかげで海外に出張した話

久しぶりに公務員だった時の思い出を書こうかと思います。これは公務員を辞めた理由とも関係する話です。海外に出張したことは当時もブログに書いていました。

TOEICスコアがないとできない仕事

海外出張の感想

私は市役所の職員だったのですが、運良く海外に出張して仕事をする機会がありました。具体的には中国に行きました。

それは中国で同じ分野の仕事をしている公務員と一緒に研修を受けるという企画で、研修は英語で行われました。その分野の仕事をしていて、なおかつ英語ができることが研修参加の条件になっていました。

国が主催するプロジェクトなので私の市役所は私の渡航費や滞在費を払う必要が無く、市役所内で、お金を使うための面倒くさい許可は必要無さそうな件でした。市長は「国際化が大事」とか言っていたので、英語で自分の専門分野についてディスカッションできる職員を育てるのは、誰も反対しようが無いことのように思えました。

当時、私はTOEIC915点で通訳案内士も取得していたので、まあ英語力的に言って楽勝に自分が参加者に選ばれるだろうと思っていました。後に退職するぐらいですので私は仕事に対して情熱は持っていませんでしたが、他国の公務員と交流するのは楽しそうだし、多少は観光したり、中国の雰囲気を味わうことができるだろうと、楽しみにしていました。

実際、私は参加者に選ばれました。あとはもう出発の日を心待ちにしていましたね。

すると、後から、市役所の人事の人から、私は中国に行ってはいけないと言われました。海外に出張に行ってはいけないことになっているからダメだと言われました。

そんなことは知りませんでした。まあ何事もルールで動く公務員の世界ですから、そういうのはルールを知らない方が悪いとは常々思っていましたので、私の方にも落ち度があったのかもしれません。しかしそのルールは、いったい誰が知っているんだろうというぐらいのマイナーな取り決めで、職員に知らせる気も無いようなものでした。私の上司も知らずに許可してましたからね。また、市のお金は使わないので、私が出張するかしないかは私の部署の問題であって、人事が良いとか悪いとか言うことではなく、私への嫌がらせかな?という風にも思えました。

これは国が主催していて、お金は国が持つと言っているので、出張できないというのはどうにもおかしな話でした。国のしていることに反対しているのと等しいです。まあ確かに国と市の政府の関係というのは、国が市の上にあるわけではなく、お互い対等なもので、民間なら別会社と言ってもいいぐらいの関係があります。なので国の主催する研修に参加してはいけないと言った私の市の人事の人は、ある意味で国と市の関係を正しく理解していたのでした。

人事の偉い人と、私の上司が、私の出張を巡って連日交渉をしていました。

で、自分が出張するための書類作りというのがこれまた面倒くさく、なんだか私はもうどうでも良くなってきていました。研修には行きたかったけど、こんな面倒くさいことをゴチャゴチャ言われるならもう出張行けなくて良いですと思い始めていました。そんなことを言える雰囲気ではなかったしもう後に引けない状態だったので、交渉している上司にお礼を言いましたけどね。

最終的には私の上司が、更に偉い人に掛け合って私が出張する許可をもらってくれました。もちろん私は感謝しましたが、更に偉い人が良いって言ったから良いというのも何だか変な話だなと思いました。人事の人は、ルールだからダメですと言い続ければ良いじゃん、って思いましたね。口には出しませんけど。

この件から私は、タダより高いものは無いということを学びました。タダで海外に行こうとしたからこんな面倒なことになったのです。市役所の仕事はお金を稼ぐためと割り切って、こういう自分のやりたいことは、他の仕事を圧迫するので、やらないでおくべきでした。

また、出張中、他の市役所からの参加者と話していて、こんなアホくさい目に遭ったのは私だけでした。国が主催する研修で、お金も国が出すなら普通に考えて参加してはいけない理由は無いのです。

私は、そんな訳の分からないルールで嫌がらせみたいなことをしてくる人々の居る市役所を、以前よりも増して嫌うようになりました。私が市役所を辞めたのは、その約1年後のことでした。

公務員はもう安泰じゃないのか

昨今、公務員や大企業の正社員を、もはや安泰ではないと煽る風潮が高まっています。夕張市は財政破綻しましたし、国の借金は1000兆円を超えました。また東京電力や東芝のような大企業が傾きました。それらのニュースを引用して、大企業や公務員はもはや安定していないと結論づけられます。

これは本当でしょうか?

元市役所職員の私は、ただの煽りだと思っています。

まず、大企業が安泰じゃないなら、中小企業が安泰なのでしょうか。大企業と中小企業を平均したイメージで見比べたら、倒産、解雇、減給などのリスクは、大企業の方が確率が低いでしょう。また、転職可能なスキルが身につくかどうかという点に関しては、大企業と言っても職種が様々なので、大企業は転職で使えるスキルが身につかないという説は乱暴すぎます。

公務員が安泰じゃないという話ですが、これは一体何を言っているのかという感覚です。

公務員は、基本的にクビになりません。クビになるのは悪いことをした場合ぐらいです。その点で、まず解雇されるリスクは低いと言えます。

国の財政がジリ貧なので公務員の給料が増えないという説があります。確かに、公務員の給料もジリ貧だと思います。ですが、そもそも、例えば市役所の職員って、給料が高いんですよね。ちょっとぐらい下がっても、まだまだ充分給料は高い水準にあると言えます。中小企業の社員やフリーランスよりも全然、平均的に言って年収が高いと思います。

唯一のリスクは、民間企業の転職市場で全く評価されないので民間企業に転職しにくいことぐらいですが、これも、別に転職しなければ問題になりません。人間関係のトラブルで鬱病になっても、休職できてしかも休職中もある程度は給料がもらえます。

公務員が安泰かと言うのは、色んな見方があるかと思います。また、そもそも安泰とか安定というふわふわした言葉をどう定義するかも問題になります。

しかし、私はまだまだこれからも公務員は安泰だと思います。なので、もう公務員は安泰じゃないから公務員にならない方がいいというアドバイスは、それは違うんじゃないかな、と思いますね。

そんな安定した職業も、面白くなければ私のように辞めてしまうので、そういった意味では安定していないのかもしれませんね。

市役所職員と英語

今日は公務員と英語についての話です。

公務員をしながら英語の勉強をしていた時、たまに

「公務員も英語はこれから必要になるから、それは大事ですね!」

と言われたことがあります。それを聞く度に、別にならないだろうなぁ、と思っていました。私は英語が好きで勉強を続けて、それを使って楽しい仕事ができそうになったから市役所を辞めただけです。

確かに世の中はグローバル化しています。私が居た市役所でも、私が辞める頃には「国際都市にする」「グローバル人材の育成が必要」とか言っていましたが、語尾に(笑)をつけながら眺めていました。市長がなんとなくそういうことを言うのです。

また、私は愛知県に住んでいるのでトヨタ自動車関係者が多く、トヨタやアイシン精機では、TOEICで730点以上取れないと課長に昇進できないなどという噂をよく聞きました。本当かどうかは知りません。

ですが、既に採用された市役所の職員が、これから英語ができないことによって不利を被ることは決してありません。

なぜなら市役所の出世コースが、英語と全く関係ないコースだからです。

市役所で出世コースとされているのは、予算を管理している財政関係の部署や、人事課や、条例や法律を統括している部署でした。全部、英語と全く関係ありません。

人事課の人たちは、自分達が全く英語ができないので、他の部署の人に、TOEICで○○点取れないと出世させませんなんてことは言えないのです。

そして、市役所の偉いおじさん達は、だいたい年収が1000万円ぐらいありましたが、みんな英語ができるからその給料を享受していたわけではありません。上司に気に入られたから出世したのです。偉いおじさんも人事の人も、英語は、通訳に任せれば良いと思っています。実際に市役所には英語や中国語の通訳が常駐しています。

最近は日本に住む外国人も増え、またインバウンドという言葉も流行っているため、市役所でも「国際〜」という名前の部署ができたりして、多少は国際化してきています。今から就職する人は、TOEICの点数が900点ぐらいあると、英語ができる奴として採用してもらえるかもしれません。就職したら他の人と何も差はありません。

私は仕事を楽しむツールとして英語を使っていました。英語は好きだったので、英語を使って仕事をするのも好きでした。市民の人に英語で説明したり、海外に出張して外国で同じような分野の仕事をしている公務員と意見交換をしました。

奇しくも、その海外出張は私に公務員を辞めることを決心させたきっかけでもあります。

私の出張の件が、先述の出世コースの部署に居る偉いおじさんから、

「君が行きたいですって言って出張して良いものじゃないんだよ」

と言われました。私は仕事として出張しただけなのに、何故そんなことを言われるのかと思いましたね。常々、市役所ではくだらないことが私の身の回りに起こっていて、常に辞めたかったので、辞めたきっかけというのはたくさんあります。これもそのうちの1つでした。

今日のまとめに入ります。今居る市役所の職員は、今後英語ができなくて困ることは一切ありません。

市役所職員と学歴

昔、公務員として市役所で仕事を始めて、学歴なんて意味が無いな、と思いました。

私の職場には、中卒の職員が居ました。バイトや嘱託職員ではなく、正規職員でした。

給料などの待遇は、初任給こそ違いますが、我々大卒と同じ給料表が適用されるので、大卒者と同じ年齢になる頃には追いつきます。そして、40歳や50歳になると出世する人と出世しない人で差がつきますが、学歴によるハンデは全くありません。

私の上司は高卒で、早稲田大学を出た私は何かと批判されていました。その人は

「社会に出たら学歴なんて関係ない。」

とよく言っていました。

これは、今日も日本全国で、学歴に自信の無い人が言っていると思いますが、2つの点から、滑稽だな、と思ってしまいます。

1つ目は、学歴と言うのは社会に出る瞬間に役に立つものだから、社会に出た後は役に立たなくても何もおかしくないということです。たまたま市役所という職場は高卒の採用も多い場所なので入る時も学歴があまり役に立ちませんでしたが、一般的に、大企業に入るなら大卒の方がチャンスが多いでしょう。

2つ目は、学歴なんて関係ないとわざわざ発言すること自体、仕事の能力と学歴を自分で結びつけていることです。市役所の仕事は、微分積分をするわけでも、英文読解をするわけでもありません。電話や窓口で市民にサービスしたり、偉い人の機嫌を取って紙にハンコを押して貰うのが仕事なわけです。そんな科目は大学入試にはありません。学歴と仕事内容は、結びつきません。上司の発言は、野球が上手い人に対して

「あの人は野球が上手い割に仕事ができない。社会に出たら野球の上手さなんて関係ない」

と言っているに等しいです。でも「あの人は野球が上手いくせに仕事ができない」とは誰も言わないけど、「あの人は勉強できるくせに仕事ができない」とはよく言われます。不思議ですね。私は野球の方が勉強よりもよっぽど仕事と似てるな、と思ったのですが。

その上司にはしばらく嫌われていましたが後に何故か和解しました。お世話になったので感謝しています。

さて、この話が公務員を辞めたこととどう繋がるかと言うと、

「せっかく東京にある大学に出してもらったのに公務員を辞めたら親に申し訳ない」

と思う気持ちが薄れたということがあります。せっかく大学を出たけど、中卒でも変わらない仕事をしていたので、大学に行っていたことが市役所に入るためのコストだったと思わずに済んだのです。親もそれを分かっていてか、私が市役所を辞めるときに

「せっかく大学まで出してやったのに市役所を辞めるのか」

とは言われませんでした。まあ、私の親がそんなことを言うような嫌な人じゃなかったというわけでもあるんですが。自分自身でも、大学を出て新卒で就職したのにそれを放棄することを勿体ないと思いませんでした。これは市役所という場で学歴が全く役に立たなかったからです。

ちなみに田舎の市役所では高卒や中卒は、入る時も、また入ってからもハンデになりません。性別でも学歴でも出世を差別をしない、リベラルな職場です。

私が公務員になった理由

私は公務員を辞めて、通訳ガイドという仕事をしています。

安定した職業を捨てて、実質フリーターと変わらないような勤務形態で仕事をしているわけです。もったいないね、と人からよく言われます。

何で辞めてしまったかと言う話をしたいのですが、まずは、そもそも何で公務員になったのかという話をしようと思います。何故辞めたのかという話とも関連してきますからね。

私が就職活動をした年というのは、まさにあのリーマンショックが起きた年のことでした。

それまで3年ぐらいは好況が続いていたので、普通に就活してれば僕も大学の先輩達みたいにどこか就職できるだろうとタカをくくっていました。

現実は甘くなくて、私は受験した民間企業全てに、不採用でした。

自分は仕事をするに能わない人間なのかと、ひどく落ち込みましたね。ちなみに、受験した企業は、キリンビールとか資生堂とか、誰でも思い付きそうなメーカーを適当に受けてましたね。よく知れた会社が安心だと思ってましたからね。今思えばその会社選びの時点で間違ってました。

大学4年生の4月に民間企業から軒並み落ちた後に、公務員を目指すことにしました。もうそれ以上、民間企業の面接を受けたくなかったんでしょうね。地元の市役所の採用試験は7月だったので、約3ヶ月、本気で筆記試験の勉強をして受けようと思い立ったのです。

マークシートの試験はもともと得意だったので、私は難関と言われる公務員の筆記試験に通過しました。

そして面接も、補欠合格ながらなんとか繰り上がりで採用されました。

マジで自分はどこからも必要とされていないのかと落ちこんでいただけに、採用された時は凄く嬉しかったのを覚えています。

まあ、結局辞めちゃうんですけどね。